丁寧に行う

先日、お寺で精進料理をいただき、「禅」についてのお話を伺う機会がありました。
「禅」とは、辞書によると、仏教用語で「精神を集中して無我の境地に入ること」とあります。
「禅」と聞いて、まず「座禅」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか?
「座禅」は、禅の中では中心的な修行の方法のひとつとされていますが、禅の方法には、他にも「立禅」、「歩行禅」、「寝禅」などの形式があるのだそうです。
他にも、「食禅(食を通して行う禅)」や「作務禅(お寺での全ての労働を通して行う禅)」などもあり、普段の何気ない生活の全てが修行であるとされています。
日常生活の中の何気ない行動のひとつひとつを大事に丁寧に行うこと、そのこと自体が修行であると考えられているようです。
お寺でいただく精進料理も、そういった「禅」の教えに触れられる機会のひとつであるのだと思います。食材を大事にし、手間暇をかけて丁寧に作られたお料理は本当に美味しく、そのお料理の由来や関連する禅の教えなどについてのお話を伺えたことは、大変貴重で、元気をいただける体験でした。
近年、ストレスへの対処法のひとつとしても注目されているマインドフルネスは、禅に由来していると言われています。マインドフルネスとは、今この瞬間の体験に、価値判断に捉われずに注意を集中させることとされています。「禅」の考え方を日常生活に取り入れ、普段から動作や所作のひとつひとつを大事に丁寧に行おうと意識することは、マインドフルネスの実践とも共通している部分が多いように思われます。
例えば、上記に挙げた「歩行禅」を自分なりに実践してみようとするならば…
ゆっくりと深く呼吸し、その呼吸に合わせて足を動かす、足を動かす時には、足の裏に意識を向けて、足の裏が地面についている感覚や体重が移動していく感覚を十分に味わう、それが無意識にできるようになったら、肌に感じるほのかな風や葉擦れの音にも意識を広げてみる…などでしょうか。
これは、集中してしまうと、人や車にぶつかる危険もありそうなので、通勤や通学の道ではなく、緑の多い公園や自然の多い場所で試せるとよいかもしれません。
修行やトレーニングとまではいかないまでも、様々な動作や所作を「丁寧に行う」ことを心掛けていくことで、心の中のゆとりを育んでいくことができればと思います。