ストレスってなんだろう
ストレスということばは、私たちの日ごろの生活の中でも、またこちらのコラムの中でも、よく目にしたり、耳にしたり、普段からよく使われている言葉であると思います。あまりよいイメージで使われることはなく、むしろ「ストレスなんてなければいいのに!」と思われることもあるかもしれません。でも、日々の生活の中では、大小さまざまな変化は毎日起きていますし、「ストレスが全くない生活」というのは、現実的には難しいことのように思われます。
そして、生活の中でのそのようなさまざまな変化に対して「ちゃんと取り組もう」、「うまくやっていこう」と思うからこそ、「ストレス」が生じてくるのだとも考えられます。逆に言えば、ストレスを感じているということは、その人が今、何かに取り組み、頑張っている証拠であるともいえるでしょう。
よくも悪くも、私たちとは切っても切れない関係であるストレスだからこそ、うまく付き合っていく方法を見つけていくことが大切です。ストレスをためすぎずに、程よく付き合っていくには、まずストレスについて知ること、自分のストレス、こころや体からのSOSのサインに気づくことから始められるとよいでしょう。そして、自分に合ったストレスへの対処法を見つけていくことが、心身の病気などの予防につながると考えられます。ここでは、その方法を探していくヒントについて考えていきましょう。
1.ストレスについて知ろう
ストレスとは、外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のことを言います。その原因となる外的刺激(ストレッサー)と、それに対して適応しようとして生じる私たちの心身の反応(ストレス反応)とを合わせて、ストレスと呼ぶこともあります。
ストレッサーには、
(1) 暑さ寒さや有害物質など物理的・科学的なもの
(2) 病気や飢え・睡眠不足などの生理的なもの
(3) 職場や家庭などにおける対人関係の中で感じる不安・緊張・恐怖・怒りなど心理的・社会的なもの
などの種類があります。私たちが普段、「ストレス」と言う時には、(3)の心理・社会的ストレスであることが多いと考えられます。
そして、ストレッサーによって引き起こされるストレス反応にも、
(1) イライラ・不安・気分の落ち込み・意欲の低下などの心理的なもの
(2) 不眠・食欲の低下・頭痛・肩こり・胃痛・便秘や下痢などの身体的なもの
(3) 飲酒量や喫煙量の増加、仕事や勉強などでのミスの増加などの社会・行動的なもの
などの種類があります。
ストレス反応は、こころや体からのSOSのサインです。上にあるようなストレス反応が長く続いたり、普段よりも程度が強く感じられたりする時には、ストレス反応が慢性化して心身の健康に大きな影響を及ぼす可能性がありますので、専門家・専門機関へのご相談をおすすめします。
2.ストレスになりやすい状況について
ストレスとは切っても切れない関係であるとは言いましたが、ストレスが高まりやすい状況や環境というものもあります。人生における大きな変化、「ライフイベント」と呼ばれる出来事が起きた時がそれにあたると考えられます。
ライフイベントには、冠婚葬祭などの家族や親族における出来事、大きなケガや病気などの体験、就職や転職、退職、職場の異動など仕事に関すること、入学や進学、卒業、友人関係の変化…などなど、さまざまなものがあります。実際には、結婚や就職、進学などに伴って転居をしたり、生活習慣や友人関係が変わったりするなど、ひとつだけ単独で起こるのではなく、多くの変化が同時に起こることも多いでしょう。
結婚や就職、進学など、それ自体はうれしいことであると思いますが、それによって起こるさまざまな変化に意識的、もしくは無意識的に適応しようとすることが、私たちのこころや体にとってのストレスの元になっていくと思われます。
つまり、かなしいこと、うれしいことのどちら(またはそれ以外の気持ち)であっても、自分にとっての変化が多い時期や、新しい環境に入っていくタイミングなどは、知らず知らずのうちにストレスが生じたり、たまったりしやすいと考えられますので注意が必要です。
3.ストレスに対処しよう
ストレスにうまく対処しようとすることをストレスコーピングといいます。
ストレスコーピングにはさまざまな分類の仕方がありますが、大きく分けると以下のような種類に分けられます。
(1) 問題焦点型コーピング:ストレスの根本的な原因であるストレッサーに働きかけて、ストレスをなくしてしまう方法
(2) 社会的支援探索型コーピング:ストレスとなっている事柄について身近な人など、第三者などに協力を得て解決していく方法
(3) 情動焦点型コーピング:ストレスによって生じた不安や怒りなどの感情に目を向けて、コントロールしていく方法
これらの方法の内のひとつだけ使うのではなくて、いくつか組み合わせて対処していく方法もあるでしょう。また、自分ひとりで解決しようとするよりも、周囲の人たちや、場合によっては専門家や専門機関などとも協力しながら、よりよい解決へ向かっていけるとよいでしょう。
こうして挙げてみると、ちょっとむずかしく感じられる方もいらっしゃるかもしれません。でも実は、日ごろ私たちが「ストレス解消法」「ストレス発散法」といっているようなことも、大事なストレスコーピングのひとつであったりもします。
趣味や好きなことに取り組むこと、体を動かすこと、逆にただのんびりぼーっとしてみること、寝ること…。みなさんそれぞれに自分なりのストレス解消法はすでにお持ちなのではないでしょうか。それに加えて、ご自身のその時の状態や気分に一番合った方法を見つけられるよう、いろいろな方法を試して、ストレスコーピングの引き出しを増やしておくことは、ストレスとうまく付き合っていくための心強いアイテムになると思います。