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熱帯夜

Shinya

熱帯夜/風鈴/カウンセリングオフィスフロローグのコラム

 8月になると、暦の上では間もなく立秋を迎えるとはいえ、ニュースや天気予報等からは「危険な暑さ」という言葉が聞こえてくる日々が続いています。環境省が平成18年から熱中症予防対策として情報提供している「暑さ指数」の「日常生活に関する指針」では、暑さ指数28以上で「厳重警戒」、31以上で「危険」とされています。暑さ指数が28以上になると「すべての生活活動で(熱中症が)おこる危険性」が高いと定義されているのです。
 そして、昼間の暑さももちろん大変なのですが、夜間にも気温が25℃以下に下がらない、いわゆる「熱帯夜」も続いていて、寝苦しさに困っている方も多いかもしれません。

 2022年に発表された東京大学、岡山大学、関西福祉科学大学のグループの研究によると、日最低気温が25℃を上回ると睡眠は悪化し、その被害は熱中症の死亡に匹敵することがわかりました。そして、この研究結果から、熱帯夜による睡眠障害の被害が熱中症に匹敵することが明らかになったことで、夜の暑さについても対策が必要であるとされています。
 また、夜間の就寝中などにも熱中症を発症することもあるとのことで、その点でも注意が必要です。

 健康づくりのための睡眠指針2014~睡眠12箇条~(厚生労働省健康局)では、良い睡眠のためには環境づくりも重要であるとしています。

 習慣としている自分の就寝時刻が近づくと、脳は目覚めた状態から徐々にリラックスした状態に移り、やがて、睡眠に入っていきます。スムーズに眠りへ移行するには、このような、就寝前の脳の変化を妨げないように、自分にあったリラックスの方法を工夫することが大切です。例えば、入浴は、ぬるめと感じる湯温で適度な時間、ゆったりとするとよいでしょう。
 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。寝室や寝床の中の温度や湿度は、体温調節の仕組みを通して、寝つきや睡眠の深さに影響します。環境温が低過ぎると手足の血管が収縮して、皮膚から熱を逃がさず体温を保とうとします。また、温度や湿度があまり高いと発汗による体温調節がうまくいかずに、皮膚から熱が逃げていきません。どちらも、結果的に、身体内部の温度が効率的に下がっていかないために、寝つきが悪くなります。 温度や湿度は、季節に応じて、眠りを邪魔しない範囲に保つことが基本で、心地よいと感じられる程度に調整しましょう。また、明るい光には目を覚ます作用があるため、就寝前の寝室の照明が明るすぎたり、特にこれが白っぽい色味であったりすると、睡眠の質が低下します。就寝時には、必ずしも真っ暗にする必要はありませんが、自分が不安を感じない程度の暗さにすることが大切です。気になる音はできる範囲で遮断する方がよいでしょう。(以上、睡眠12箇条解説より引用)

 この解説を読むと、良い睡眠のための環境づくりとして、温度や湿度が非常に大切であることがわかります。具体的には、室温は26~27℃前後、湿度は50%程度がよいとされています。エアコンが苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり熱帯夜にはエアコンを上手に使う必要があるようです。

 その他の対策としては、次のようなことも挙げられます。

1.通気性や吸湿性、放湿性のよい天然素材の寝具を使う。
綿や麻などの素材は、ポリエステルなどの化学繊維に比べて、通気性や吸湿性に優れています。特に麻の素材は、ひんやりとした感触もあり、涼しく眠ることができます。また、冷たい感触だけでなく、麻は放湿性にも優れているため、じめじめせずに快適に眠ることができます。
天然素材に限らず、いわゆる接触冷感の寝具なども多く見られますが、冷たいだけでなく、湿度を低く保てる素材を選んだ方がよいと考えられます。

2.氷枕を使ったり、冷却シートをおでこに貼ったりして頭部を冷やす。
氷枕を使う場合は、冷やし過ぎると逆に目が冴えてしまうこともあるので、タオルなどで包んで程よい温度に調節するとよいでしょう。

3.就寝の1時間位前にぬるめのお風呂に浸かって体を温める。
深部体温が下がる時に眠気が起きることから、入浴後1時間程の深部体温が下がってくるタイミングで入眠しやすくなると考えられます。

4.就寝前に水分補給をする。
一般的に、睡眠時にはコップ1杯分の水分を汗として失うとされています。夏場はそれ以上に汗をかいていると考えられますので、水分補給は熱中症対策としても有効であると考えられます。利尿作用のあるアルコール飲料やカフェインを含むコーヒーや緑茶、紅茶などでなく、水や麦茶などのノンカフェイン飲料を飲むようにしましょう。

5.パジャマに着替えて就寝する。
睡眠に適した締め付け感のない作りになっていて、吸湿性、放湿性に優れた素材のパジャマを着ることで睡眠の質が上がるという点に加えて、パジャマに着替えるというひと手間を入れることで、心身が睡眠に入るための準備のスイッチになるという側面もあります。

 睡眠不足は体の健康ばかりでなく、こころの健康にも悪影響となると言われています。色々と対策を取ってみても、睡眠による休養感が得られないことや眠れないことなどが続く場合には、ひとりで抱え込まずに、専門家に相談することも検討してください。

 寝苦しい熱帯夜ですが、自分の体やこころからの声を聞きながら、なんとか乗り切っていきましょう。

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